第4回 M&Aを仲介してくれる3タイプの業者-メリットとデメリット

日常診療で忙しい日々を過ごしていると、後継者問題に対する時間を設けることが難しいかもしれません。そんなときには、自分に代わって後継者候補を探し、買い手候補への打診や交渉などを行ってくれるM&Aの専門業者を頼るという選択肢があります。
では、M&Aを仲介する業者にはどのような種類があるのでしょうか。また、どのようなサポートをしてくれるのでしょうか。M&Aを仲介する業者について詳しく見ていきましょう。

◇M&Aを仲介する業者の特徴

昨今、入院ベッドを持たない無床診療所や小規模の医療機関での後継者不在が問題となっています。この後継者不在問題を解決するための選択肢のひとつがM&Aで、医療機関同士や医師同士をつないで事業継承がスムーズに行われるように支援を行うのがM&Aを仲介する専門家です。
医療機関のM&Aに特化した専門業者は数多くありますが、大きく分けると3つのタイプに分けることができます。

●会計事務所など「お金の専門家」がいる業者
会計事務所などを母体とするM&A業者では、税理士、公認会計士などの専門家から成るチームが組成され、専門家による支援が行われます。また、事業継承後の経営統合効果を最大化させるプロセスPMI(Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション)に知見がある業者を選択すれば、M&Aにとどまらず、PMIの提案を受けることによって経営、人事、システムの統合、組織再編などを実行し、将来に向けて医療機関の価値を高めることにつなげることも出来るでしょう。

こうした会計事務所などを母体としたM&Aの業者を利用することのメリットは、事業承継の前から継承後に至るまでその業者とタッグを組んで支援を受けられるという点にあります。たとえば、事業承継前からその会計事務所と顧問契約があるようなケースでは、長年にわたる資金の流れに関することはもちろん、経営者の思いも熟知したうえで後継者探しを行うことが可能でしょう。そのため売り手にとってよりミスマッチの少ない後継者を見つけやすいと考えられます。また、事業を引き継いだところで取り引きが終了するわけではなく、その後の相続などのアドバイスも継続して受けられるので安心感があります。こうした点が会計事務所などを母体にした業者を利用するメリットと言えます。

一方のデメリットは、広く多数の後継者候補にあたってマッチングを行うことはなく、秘密保持をしながら慎重に事業継承の準備を進めていくため、急いで事業継承を完了させたいという方にとってはスピード感にやや欠けるかもしれません。

●後継者のマッチングに特化した業者
開業医や勤務医のデータを抱える会社が、医療機関を売りたい医師と買いたい医師を結びつけることに特化したサービスを提供するというのが2つ目のタイプです。

承継に関する方針や希望をすり合わせた後、買い手探しが始まります。買い手が現れた場合には業者から紹介され、この人ならと思う買い手だった場合には面談などのステップに進みます。

マッチングに特化した業者のメリットは、広く買い手を探せることです。一方のデメリットはマッチングから先のM&Aに関わる業務のサポートは行っていないということです。ただ、マッチングに特化した業者が先述の会計事務所などを母体としたM&A業者と提携していることもあります。この場合は事業継承完了までの支援を受けることが可能です。

●マッチングからM&Aを行う業者
先述した2つの業者のサービスを合わせた後継者探しからM&Aまでをワンストップで行う業者もあります。メリットはスピード感がある点です。一方のデメリットは会計事務所のような会社がバックアップについているわけではないので、お金の専門家のサポートを受けられないかもしれない点にあります。

◇M&Aの専門業者に依頼したときの料金は?

M&Aの専門業者への支払額は、固定報酬や成功報酬等どの業者を利用するかによって異なります。また着手金、中間報酬を支払う場合もあれば、完了時の成功報酬のみという支払い方など、支払い方法等も業者ごとに異なります。

まず成功報酬として支払う場合は、事業や売上規模に対してのパーセンテージで決まる場合も多いため、相場金額を示すことは難しく、事業継承の規模によってさまざまと言えます。次に着手金として支払う場合の目安は50万円から200万円が相場とされています。最後に中間報酬の目安ですが、これは買い手と基本合意という契約を結んだ段階で支払うことが多いです。この金額は業者によってさまざまで、相場金額がないのが現状です。

このようにM&Aを行う専門業者と一口に言ってもいくつかの種類があり、その料金形態もそれぞれ異なります。また、医療機関のM&Aは経営者当人同士だけではなく、多くの関係者の合意が必要となり、関連法規に配慮しつつ行政対応などの特殊なプロセスもクリアしなければなりません。極めて高い専門性が求められると言えますから、業者選択の際には料金を事前に確認することはもちろん、M&Aに対する実績やPMIの支援に知見や実行性があるかどうかなども見極めて選ぶことが大切です。

(2021年1月時点 ※本記事は日本経営ウィル税理士法人より提供を受けています。)

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